なんとなくイニシャルリストを作ってみたが、仕事で大事にしているものは何か、漠然としていおり、納得感がないなと彼女は感じている。一度、これまで過去に経験したことを思い出す必要があると彼女は意を決し、過去の自分を振り返ることに決めた。
新入社員として彼女が入社をしたのは、当時人気のあったアパレル企業だ。今の基準で考えてみるとかなりのブラック企業体質だったような気がする。残業代も固定だったし。仕事が深夜まで及び、かなり時間も不規則だった。当然、食事をする時間は帰宅をしてからとなるが自炊する気力なんてあるわけがない。コンビニに立ち寄り食材を求めるが、お弁当などは売り切れていることが多く、カップ麺などのジャンクフードで済ませることが多かっただろう。
当時はまだ20代の若さがあったとはいえ、体調を崩したこともある。
就職先にファッション業界を最大の理由は、ファッションに対する興味。苦労の多い職種であることは、承知をしたうえでの選択だった。当時は、仕事の苦労も人生に必要な経験くらいにとらえていたようだ。
彼女の担当は西日本地域の、FC店他20数店舗。販売店は個人事業主が多い。普段コミュニケーションを取るのは、販売店の店長や店員だ。数字のとれる営業職ではなかったが、彼女はオーナーや店長と個人的な関係を構築することは苦にしなかったようだ。
ただ、ファッション業界でどのようなキャリアを辿るのか、全くイメージもなく目の前の仕事をただこなすだけの毎日、彼女は不満を持ち始め、仕事を辞めたいと思うようになった
当時、会社の業績も悪化しており、社内でも倒産するのではないかとの不安も出始めていたころだ。
ある日、オーナー社長の鶴の一声で数日かけて会社内の倉庫整理に明け暮れたことがある。霊能力者から倉庫に悪霊がいるので、業績が悪化しているとお告げを受けたらしい。
なんというオカルト体質!
さらに追い打ちをかけるように返品された商品を棚卸から除外するよう命令を受けた。これは粉飾決算のためであるのは明らか。
このような会社にはいられないと彼女は真剣に考え始めたが、だからといって転職をしようとも思わず毎日、ルーティン業務をこなしがら彼女は耐え続けた。
しかしある日突然、上司面談で左遷を伝えられた。
異動先は飲食事業。
当時、ファッション業が関連する産業に進出することは珍しくなかったのだが、その会社の飲食事業は一店舗のみで、本業に比べると明らかに劣る事業であった。
彼女は、事実上の戦力外通告であることを理解し、退職を決意した。
営業職として不合格判定をされた過去は、今後も尾を引くきっかけとなり、現在に至るまで彼女が営業職を希望しない原因となっている。
もちろん彼女自身も自分が営業向きとは思っていないこともある。
この時代を振り返り得た教訓は以下の通りだ。
・今も含めてキャリアプランがないこと
・一度の失敗であきらめてしまったこと
・視野狭窄に陥り、他の選択肢を検討しなかったこと
もちろん得たこともある
・社会人としての経験
・得意先や同僚先輩との関係構築
・ファッションの知識
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